50才からの歯科技工

【プロの技】3Dプリンタープロビジョナルのマージン適合を劇的に改善する調整テクニック

デジタル技工に取り組む歯科技工士や歯科医師の方なら、一度はこんな悩みに直面したことがあるのではないでしょうか?ガタついたり、内面が緩かったり、時にはマージンが欠けてしまったり。

今回の記事では、そんな3Dプリンター製プロビジョナルの「あと一歩」を完璧に仕上げるための、プロフェッショナルなマージン調整テクニックを徹底解説します。

なぜ3Dプリンターの仮歯はピッタリ合わないのか?

3Dプリンターは非常に高精度な造形が可能ですが、材料の収縮や積層ピッチ、サポート材の影響など、様々な要因でミクロの誤差が生じます。その結果、

  • マージン部分の浮き上がりやガタつき
  • 内面の緩さによる保持力不足
  • 薄いマージン部分の欠け

といった問題が発生しやすくなります。そのままでは十分な機能を発揮できないため、ここから一手間加えることが、精度の高い補綴物製作の鍵となります。

解決の鍵は「盛って、削る」精密調整法

この問題を解決する基本的なアプローチは**「一度材料を足して圧接し、その後で精密に削って形態を合わせる」**という方法です。これにより、緩い部分を埋めて確実なフィット感を得ながら、理想的なマージンラインを再構築します。

使用する材料:GC「テンプスマート」

今回の調整で使用するのは、GC社の「テンプスマート」です。
これは即時重合レジンではありませんが、口腔内や模型上で圧接してプロビジョナルを製作するための材料です。

【ポイント】
3M社の「プロテンプ4」も同様の用途で使えますが、テンプスマートはノズルが細く、単冠のような小さな調整でも材料を無駄にしにくいというメリットがあります。

調整の基本ステップ

  1. マージンに一層だけ材料を盛る
    プロビジョナルの内面全体ではなく、マージンライン周辺にのみテンプスマートを一層、薄く盛り付けます。全体に盛るとキツくなりすぎるため、調整したい部分に限定するのがコツです。
  2. 模型に圧接し、硬化させる
    材料を盛ったプロビジョナルを、ワセリンなどを塗布した支台歯模型にゆっくりと圧接します。その後、光を照射して硬化させます(仮重合)。完全に硬化する前に余剰な部分を除去すると、後の作業が楽になります。
  3. 形態修正:バーで削ってマージンを仕上げる
    最終重合させた後、はみ出した部分をフィッシャーバーなどで丁寧に削り、マージンラインを精密に仕上げていきます。現代のジルコニア製作などと同様に、「少し厚めに作っておいて、削って合わせる」という考え方がここでも活きてきます。

この手順を踏むことで、緩かった内面がピッタリとフィットし、安定したプロビジョナルが完成します。

【究極の裏ワザ】欠けたマージンは「プリンターのレジン液」で修復!

調整中にマージンが少し欠けてしまった…そんな時も諦める必要はありません。ここで登場するのが、プロビジョナルをプリントした時と同じ3Dプリンター用のレジン液です。

  1. 欠損部にレジン液を塗布
    修正したいマージン欠損部に、筆などでレジン液を少量、精密に塗布します。
    (分離材を忘れずに ワセリンやアクロセップ)
  2. 光重合で硬化させる
    塗布した部分に光を当てて硬化させます。同じ材料なので収縮も少なく、一体化するように硬化します。
  3. 形態を整える
    硬化後、表面を軽く研磨すれば修正完了です。

この方法は、驚くほどきれいに、そして強固にマージンを修復できます。わざわざ他のリペア材を用意する必要もなく、最も合理的で確実なテクニックと言えるでしょう。

まとめ

3Dプリンターによるデジタル技工は、私たちの仕事を大きく変えましたが、その性能を最大限に引き出すには、最後のアナログ的な「一手間」が欠かせません。

  • 緩いマージンは「テンプスマート」で圧接してフィット感を向上させる。
  • 欠けたマージンは「プリンターの純正レジン液」で完璧に修復する。

この2つのテクニックをマスターすれば、3Dプリンターで製作するプロビジョナルのクオリティは格段に向上し、患者さんにより精度の高い補綴物を提供できるようになります。ぜひ、明日からの臨床・技工に取り入れてみてください。